駅前から私の家までは15分くらい。

塗師君は、意外にも話をふってくれたりして、思いのほか楽しい帰り道だった。

男の子とつき合ったらこんな感じなのかな。

小学生の時以来、男の子と一緒に歩くなんてしたことなかった。

一緒に居たとしても、大勢の中の一人って感じで、二人きりって事はなかったなぁ。



「ねぇ、此処に来る前はどこに居たの?」


何気なく、そんな質問をしてみる。


「前か。人間界的には、実はこの隣の街に居た。」


「えっ!?隣町から引っ越してきたの?」

「そういう事になるな。」

実は、すぐ近くにいたのかぁ。
なんか不思議。

これも修行とか関係してるのかな?


「ふぅん。死神も色々大変なんだね。」


「はぁ?」


「じゃあ、駅前辺りに居たら知ってる人にもよく会うんじゃない?」


この街はこの辺では割と大きい街で近隣から買い物なんかにくる人も多い。


「誰も俺を覚えてないよ。転校と同時に俺に関わった人間全ての記憶をちょっといじったからな。」


さらりと凄い事を言う。
死神はそんな事もできるんだぁ。


「そう、なんだ。」


そうこうしているうちな私の家に着く。


「あ、私の家、ここなんだっ。」

「へぇ、此処か。」


「送ってくれてありがとう。また明日、学校でね。」

「あ、待てよ。」


家に入ろうとした私を塗師君は呼び止める。


「携帯の連絡先教えて。」
「え?あ、うん。」


赤外線通信で塗師君とアドレス交換をする。



「あの黒いの見つけたらすぐに連絡しろ。じゃあな。」


って。
用件だけ言ってさっさと帰っていった。



はぁ、なんだか疲れたなぁ。

今日は早く寝よう。
家に入ると夕ご飯のいい匂いがした。