ある日の学校の教室。


私と教室は真っ赤にそまる夕日に照らされていた。

校庭では野球部が大声を出しながら必死にプレーをしている。

少し視線をずらすとサッカー部がプレー中だった。


サッカー部の蹴るボールは時に早くて、時に緩やかな弧を描いて中を舞う。

恋愛みたい。と思った自分を少し笑う。


でもそこには私だけの笑い声が響いた。

一人になるのは好きではない。

でもこういう空間、時間は可愛らしいものだと感じる。


こんなのが日課だった。

でも楽しかった。
これを現実逃避というのだろうか。


「……あ。」


そういえば今日は七夕だ。と不意に思い出す。

今まで七夕なんてしたことは無いが、丁度ノートを広げていたから願い事を書いてみた。


「second☆star(セカンドスター)」のDVDが発売されますように


と、短冊ではないが、ノートの切れ端に書いた。

second☆star略称セカスタは音楽番組に出たりしないから一般的には知られてないが、ドラマの主題歌などを歌うマイナーといえばマイナーのバンドだ。

よって顔は非公開。だからCDもPVに本人はもちろん出ていないし、年もわかってないのだけれど

私が好きになったのはまず最初は歌詞からだった。

セカスタの歌詞は全部メンバー全員が書いている。

珍しいなと思って聞いたのがキッカケ。

その曲は恋愛の曲で、スッと耳に馴染むような歌詞だった。

サッカー部のけるボールはこの曲に似てるかもしれない。

たまに早くて、緩やかになったりする曲調だ。

この曲は「歌いたい曲」というより「聞いていたい曲」だった。

ヘッドフォンから流れる曲にのって音符が浮いてるようだった。

その音符は私を囲み、そっと音を奏でてくれているようだった。


「…よし。」


一呼吸してから、重たい鞄をもった。

ふと目をやったノートの切れ端は、机の上で風にふかれ音符が曲に乗るように華やかに舞って床におちた。
拾うのが面倒になった。

「明日でいいか。」

私は切れ端をそのままに、教室を出た。


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