持ち直したはずのシャーペンを
思わず落とした。


静まった保健室に、シャーペンと床
のはじかれる音が響いた。


「あっ、ごめんなさいねっ・・!
聞かない方が、よかったわね・・?」


シャーペンを落とした僕を見て、先生は
「選択を間違えた」と言いたげな顔をした。


ついシャーペンを落としたのが
悪かったかな。  別に、
言っても言わなくても、僕は大丈夫。


《大丈夫》を一番深く心に刻んで、床に
転がったままのシャーペンを拾い、左手に
持ち直した。


「え・・ 児玉君?」


戸惑う先生に目配せをし、新しいページに
捲くったスケッチブックに、シャーペンを
当てた。