「ごめん……ヤキモチ妬いた」

「ヤキモチ?」



ふと顔をあげると、
仁が哀しい表情であたしを見つめていた。



この顔、見た事ある。



あ……クリスマスの日だ。

あたしが仁からの告白を断ってしまった日。



「さっきの電話で男の声聞こえたから……ごめん、泣かんといて?」



あたしの頬に手をあて、
親指で涙をすくう。



「待つって言うたのに、ガキでごめんな」



首を横に振る事しか出来ない。



だって、仁を苦しめてるのはあたしでしょう?

あたしが恐がって踏み切れないから。

仁が悪いんじゃないのに。



「明日、仕事やろ?」

「……うん」

「じゃあ、俺帰るな」



あたしの頬から手を離し、
駅へと向かって歩き出す。



「じ、仁!」



呼び止めたのは、あたしなのに。



「さっきのは忘れて! おやすみ」



そう言い残して帰って行ってしまった。