「少なくとも中山よりは上手く行くと思うよ?」
うどんの汁を飲み干した千恵が言った。
「え? 何の話?」
中山君は興味津々といった表情で、
千恵とあたしを交互に見る。
「好きな男の話」
「ちょ、千恵!」
サラッと言われて焦った。
「え、なになに? 柊、好きな男いんの?」
楽しそうな中山君。
もー勘弁してよー。
「どんな奴? って、山北(ヤマキタ)! こっちこっち!」
目をキラキラと輝かせた中山君が、
立ち上がり手招きをすると見た事のない男の人が近付いて来た。
目が合い、
ペコリと軽く頭を下げると、
山北さんと呼ばれていた男の人も頭を下げた。
「中山、お前どこ行ってんだよ」
「悪い悪い! 合コン相手を探してたらさ。柊見つけてさ」
中山君が、あたしを指差すと山北さんが、
またあたしに視線を向ける。
今までの表情とは違い、
作ったかのように微笑んで
「あぁ、今日の? 宜しく、山北です」
と手を差し出してきた。
取り合えず、
握り返しニコッと笑ってみる。

