自分の机の前に立ち、
ゴミへと視線を落とした男の子は何の迷いもなく机を蹴飛ばした。
ガタンッ!
大きな音を立てて倒れる机。
その上にあったはずのゴミが辺りに散らばる。
時が止まったように静まり返った教室で男の子の声は響いた。
「お前等、ゴミ捨てる場所もしらんのか?」
そう言ってニヤッと笑い、
倒した机を起こすと散乱したゴミを無視して席についてしまった。
「ちょっ!」
カーッとなった主犯格の男子が食って掛かろうとした時、
「だね」
「うん、早くゴミ拾いなよー」
そう言って、楠木と敦がその男の子の席へと向かった。
「俺、敦。よろしくねーん」
「俺は楠木ね」
ピースをしながら男の子の前の席に座った敦と、隣でにっこりと笑う楠木。
「敦と楠木?」
そう聞かれ、うん。と頷く2人。
「俺は、仁」
「仁か。お前、顔だけじゃなくて名前もかっちょいーなぁ」
「おーい、礼子! 仁だって!」
え!?
呆気に取られていた私に、
楠木が叫んで男の子……仁と目が合った。
「あ。れ、礼子。よろしくね」
そう言ったら、
仁はにっこりと笑って
「よろしく」
そう言ってくれたんだ。

