「仁と、どーなのよ?」
ガヤガヤした社内食堂で、
トレイに乗せたカレーをテーブルに置くと同時に、
先に座っていた千恵が突然言い出した。
「何、突然?」
椅子を引き座ると
「いただきます」
と両手を合わせてお箸を持ち、続ける。
「付き合ってないんでしょ?」
「……うん」
あたしも
「いただきます」
をしてスプーンを持つ。
「で、どーすんの?」
七味を3回振った後、
何も答えないあたしにようやく視線を向けた。
「あたし、こんなじゃん?
付き合って仁と終っちゃうくらいなら、このままがいいんじゃないかなって思うんだ」
「このままって、仲のいいお友達ってこと?」
コクリと頷くあたしを見て、
千恵はうどんをすすった。
「それでも別にいいと思うよ、私はね。
でも、それは仁の隣は綾乃の位置じゃないってことにもなるよ?」
「え?」
「仁に特別な子が出来る事もあるってこと」
特別な子って……。
「彼女って意味?」
「そう。仲のいい友達に、彼女を作るなって権限まではないでしょう?」
確かに、そうだ。