あっ! 出た!
「綾さん!? どうかしたん? 電話でぇへんから心配したやん」
何の反応もない。
「綾さん!? 聞こえてるー?」
大きな声を出してみるのに、
何にも聞こえてこない。
「綾さ……」
《む……り》
「へ? 綾さん!? ちょっ……」
そこで切れた電話。
何かあったんか!?
もう一回かけても繋がれへんし。
中へと戻り、
早番で帰る準備をしてた楠木の首を掴んだ。
「った! は? 何?」
「一生の頼み! バイト変わってくれ!」
俺の手を振り払い、
驚いた顔を見せた。
「はぁ? 朝6時から頑張ってたんですけど?」
「だから一生の頼みって言ってるやん」
「……頼んでるわりに偉そうじゃない?」
少し冷たい目で俺を見ながら呟くから……。
仕方なく手を合わせて
『頼む! 違う日バイト変わるからっ』
ってお願いし直した。
ニヤッと笑った楠木は、
「OK。また決まったら言う」
って意味深な答え。
でも、今の俺には気にしてる時間なんてない。
ダッシュで、
ロッカーにエプロンをほり投げ着替えて外に出た。

