玄関の閉まる音と共に、
薄暗い部屋でもわかる仁の笑顔が、
「あはっ。泣いてるし」
目の前にあった。
「あっ! 鍵閉めるん忘れてた」
玄関の鍵を閉め、
戻ってくる仁の姿にすでに涙目のあたしはボロボロと涙を零してしまった。
「綾さん、風邪ん時弱いなぁ」
なんて優しく頭を撫でて笑うから、
止まらないんだよ。
「昔の……付き合う前の綾さんみたいやな。
普段もこれくらい素直で居てくれてもえぇんやけどなぁ?
まぁ、どっちも可愛いんやけど」
仁は変なんだ。
我儘を素直って思ったり。
それを可愛いだなんて。
「俺、おっても平気?」
「うん……何で?」
「綾さん寝たいやろうし、邪魔やと思って帰ったんやけど」
「ううん! そばに居て欲しい」
あたしの頬に手をあて、
笑った仁の顔が近付いて来て……後数センチ
ってところで止まった。

