そばにあった携帯に手を伸ばした。
とても大きく聞こえる呼び出し音。
すぐ出てくれた仁が嬉しかったんだ。
《綾さん、何かあった?》
名前を言う前にわかってくれるのが嬉しい。
あたしの名前が登録されてるんだよね。
《大丈夫?》
低くて優しい声も好き。
全体に響く感じが心地良いの。
《綾さん?》
「仁……寂しい」
《……っ》
え……っ?
切られたの?
耳にあてた携帯からはプープープーとしか聞こえない。
我儘だった?
迷惑だった?
あまりの馬鹿さと、体の怠さと、色んなのが混じって……
何だか泣けてきた。
我儘だったかも迷惑だったかもしんないけどさ、
電話切らなくてもいいじゃん。
切らなくても……。

