その場に残されたあたしが、
チラッと見上げた仁と目が合った。
バツの悪そうな笑顔に、
またきゅーんって音をたてる心臓。
だって。
仁が人前で“好き”だなんて。
しかも余裕を持つくらいなら、
もっとあたしを好きになるって。
「最後キレてもた」
「え? あ、うん」
そう言えば敬語じゃなかったね。
頭をクシャクシャとかきながらあたしを見下ろし、
「ごめんな?」
「へ? 何で仁が謝るの?
あたし……嬉しかったよ」
あたしの言葉を聞いて、少し赤くなった仁は
「俺、めっちゃ嫉妬深いかも」
そう呟いて
「迎えに行くって言うたんも山北にちゃんと言っておきたかったからで……」
語尾が小さくて、ちゃんと聞こえなかったけど。
あたしを迎えに来てくれてた理由も。
さっき綾って呼び捨てにした理由も。
全部わかった。
あたしは好きになったら一直線。
好きな人が中心で、その人のことしか考えれなくなる。
そんな、あたしに嫉妬は最高の気持ちなんだよ。
お互いの距離感、自分の時間なんて、あたしにはないから。
だから……嬉しくて嬉し過ぎて涙が出ちゃうってば!

