「今日ね、バイト先に行ってたんだ本当は。で、礼子ちゃんの告白も知ってる」

「あ、そうなんや」



言いたいことを言い終えると、
仁はあたしの涙でボロボロの顔を優しく撫でてくれた。



「本間は、あの日。山北と帰って来た日な?
礼子に告われたことを綾に言おうと思って行っててん。
俺、本間に気付いてなくて。
しかも俺のツレが礼子のこと、ずっと好きなんも知ってたから、どうしていいかわからんくて」



そうだったんだ。

あたしに話してくれるつもりだったんだ。


それなのに、あたし……。



「あ。綾が悪いんちゃうで?
俺に余裕がなかっただけ。
気付かへんかったんは俺やのに、綾のこと見たらそっちに気取られて……んま、ダサイわ」



ううん、と大きく首を振った。



「でも、それで綾のこと傷付けてるやん」



違う、違うんだもん。

あたしが、もっとちゃんとした行動をしてれば良かっただけじゃん。



「だから、ごめんな?」

「あたしがっ! あたしが言わなかったから悪いんだよ。
勝手に不安になって。
勝手に心配して。
勝手に妄想したから……悪いんだもん」

「ふっ。妄想って」



ずっと哀し気な表情をしていた仁が、
やっと笑ってくれた。

その笑顔に胸の奥がキューンって音を立てる。



「仁……好き」



その言葉で真顔になった仁は、瞬間。

口角をあげ、



「今日の方がめちゃくちゃにしてまうかも」



そう言って、あたしの唇を塞いだ。