「仁!」



何でここに居るの?

バイトは?

文化祭の準備は?


聞きたい事がいっぱいあるけど、
会えたことが素直に嬉しくて、
上擦った声で名前を呼んだ。



ちょっと息切れしながらも、
ベンチに座ってる仁の前に到着。


それなのに。

機嫌、悪い?


いつもなら

『綾さん』

って優しい笑顔が返ってくるのに。


あたしを見上げると、
無表情の仁がそこにいて。



「バ、バイトどうしたの?」



声が震えてしまう。

そんな、あたしから視線を横にズラし



「綾さん、あれ誰?」



そう指差す方向。

振り返ると、手を振ってる千恵が見えた。


小さく手を振りかえしたら、仁に手首を掴まれてしまった。



「え? 千恵だよ?」

「その横の奴」



言われて千恵の横を見ると、
山北さんがこっちを見ていた。



「山北さん? 会社の人だよ」

「ふ~ん……さっき抱きついてへんかった?」



あ、見られてた?

鈍臭く躓いた姿を。