「……うん、わかった。忘れるね」
さっき千恵に言われた
『ま、男はかっこつけたいもんなんだよ。
だから今1番恥ずかしいのは仁じゃん?』
この言葉が浮かんで。
それに今の仁を見ても、ここは
『うん』
が正解だよね。
「あ、コーヒーでもいれよっか」
この話は、これで終わった方がいいと思ってキッチンに向かったあたしの背中を仁が抱きしめた。
「やっぱ……忘れたあかん」
じ、ん?
突然の事に声が出ないあたしは固まってしまって。
「綾さんなら意地悪く“忘れない”って言うとこやん」
って……意地悪くなんて言わないもん。
頬を膨らまし、仁に言い返そうと思ったのに。