もー、仁と居るのに何考えてんだ、あたし!
頭の中をリセットして、受け取ったヘルメットを被ろうとした時。
「あと、これも」
そう言って差し出された小さな箱。
それをキョトンとした表情で見つめていると
「綾さーん?」
仁の不思議そうに呼ぶ声。
見上げると、首を傾げ
「今日、ホワイトデーなんすけど」
と苦笑い。
あ!
そうだった。
「ごめんっ」
すっかり忘れていたあたしは、慌てて受け取った。
「何? 俺がお返しなしとか思ってたん?」
ちょっと拗ねた仁に首を振りながら
「違う、違う!」
変に大きくなってしまった声。
「はは、わかってるよ」
一体、仁はどこまであたしがわかってるんだろう。
本当に仁はエスパーかもしんない。

