【完】ラブ☆パワー全開




角を曲がり、目線をあげた瞬間。



「綾さんっ!」



バタンッとドアの閉まる音と同時にした仁の声。

ちょっと乱れた格好を直しながら、笑う姿。



「仁、早くない?」

「めっちゃ急いだ」

「あは。襟立ってるよ?」

「え!? ださっ」



そう言いながら慌てて襟を正す。

こんなちょっとしたことを
嬉しく思ってるなんて仁は気付いてないんだろな。

急いでくれたのって……あたしの為、だよね?



「ごめんなぁ、待たせて」

「ううん、全然!」

「バレンタインもやし、ホワイトデーもなんて……」

「本当に気にしてないって。あたしも今日、仕事だったしね?」

「ん。でも新しいバイト入って来てるから、もうちょい休み取れるようなるし」

「あ、そうなんだ」



それって、あの子のことかな?

さっきの女の子の顔が頭に浮かぶ。