その声に背中を押されながら、
自動ドアが開いた時。
「仁、お返しはー?」
ハッキリ聞こえた“仁”って名前。
歩きながら、振り返ると
そこには仁と同じ制服を着た女の子が1人。
その横には仁の姿が見えた。
「んなもんあるか」
「えー!」
そこで自動ドアは閉まってしまい、
中の声は聞こえなくなってしまった。
だけど、仁を見上げる女の子は笑ってて。
仁も、さっきまでの営業スマイルとは違う、いつもの笑顔で話していた。
ボブヘアの茶髪が似合う綺麗な女の子。
ガラス張りの店内を見ながら、お店の裏へと回る。
仁は、既に奥に入ってしまったけど、
あたしはその女の子から目を離せなくて。
そうすると絡まってしまった視線。
慌てて逸らしたけど……睨まれた?
何となく変な違和感を抱きながらも、
もう一度そちらに目線を向ける勇気もなく歩き続ける。
角を曲がる時、不自然にならないように店内を覗くと、もうその子はその場に居なかった。

