「そんな子がチョコをわざわざ渡すかな? って」
え?
「うん、確かに。いい感じの男の子がいるなら、その子だけに渡すよね」
「うん、だよね」
どうやら、千恵と山北さんの意見は同じらしく頷く2人。
「てかさ。弟は貰ってなかったよ? 腐れ縁ならうちの弟も入ってるでしょう?」
「え? 敦(アツシ)君もらってないの?」
千恵の弟の敦(アツシ)君は、
仁がこっちに来てからずっと同じクラスだって言ってた。
その敦君がもらってないのに……仁だけ?
「ま、あいつは彼女一筋だから腐れ縁なら知ってて渡してないだけかもしんないけどね」
そう付け足してくれた千恵の言葉なんて届かないくらいに、あたしの頭の中はこの間見た手紙が浮かんでしまっていた。
「まぁ、カモフラージュってのもあるとは思うけど」
「あー……そうだよね!」
山北さんの言葉に、
取り繕うかのように千恵が答える。
カモフラージュ?
「いい感じの男の子だけに渡したらバレバレだから仁君にも渡しておく。ってね」
あぁ、なるほど。
だけど……本当に?
さっきまで何とも思ってなかった、あたしの中の小さな小さな疑問が少しずつ膨らんでる事に。
自分では気付かずにいた。

