ワケわかんねぇよ。
お前乗りたいって言ったろ?

俺は出来るだけ止まらないように走り続けた。
多分ナギサは今俺に顔を見られたくない。
俺もナギサの顔を見たらどうしたらいいかわからない。

とにかく走り続けた。
しばらくすればナギサはまた無邪気に笑ってくれるさ。
あの改札でバイバイする時みたいに。


あたりはすっかり暗い。
地元の駅に戻ってきた。
駅のロータリー。
バイクを止める。
でもナギサは俺にまだしがみついてる。
多分そのまま5分くらい経った。

『…あ〜楽しかった♪』

いつものナギサだ。
よかった。

『今日はありがと!また明日ね♪』

ヘルメットを俺に手渡すとナギサは急ぎ足で階段をかけていった。

追い掛けたくなった。
手を掴んで抱きしめたくなった。
こんなに誰かを愛おしく想ったコトはない。

空気の読めないバスが後ろからクラクションを鳴らしてくる。
俺は仕方なくバイクにエンジンをかけて家に向かって走り始める。

帰りの風は肌寒かった。