俺の問いに彼女はただ、黙って俯いた。



『………』



沈黙が流れる中、俺は彼女のすぐ側にあるボストンバッグに目が止まる。



それほど大きくないボストンバッグに俺はピンときた。



「…彼氏と喧嘩でもした?」



俺がそう呟くと彼女はビクッと肩を揺らして俺をチラッと見る。



「…いや、あの…はぃ。。。」



彼女は小さく答えるとまた、下を見た。




季節の変わり目…暑い日もあるが、さすがに雨の日は肌寒さが残る。



彼女が小刻みに震えているのがわかった。



俺は着ていたジャージのパーカーを脱ぎ彼女にかける。



彼女はパーカーの裾を掴み『…有難うございます』と震えた声で言うと、とても寂しそうで泣きそうな顔をしていた。