「般若の形相だ。」
「あ?」

「なんでもないです。」

おずおず隣に座ると、
高嶺悟は満足そうに笑って私に向き直る。


「あの、すいません。
教科書返してもらえません?」

見つめられて焦った私はとっさに口を開く。

「あぁ。
そういや渡してなかったな。」

ニヤリと笑って
立ち上がった高嶺悟に、大きく息を吐き出した。

なんだか…
やけに胸が苦しくて。



昨日の約束を忠実に守って
実験室に来た私。

だけど…

なんか、来なきゃ良かった。