「茉莉子…泣いてない?」 右耳だけから聞こえる優しい声に、我慢してたはずの涙が一筋こぼれ落ちた。 「泣かないよ…」 平然を装ったつもりでも、 声は震えていた。 「ごめん。」 ねぇ、高嶺悟。 謝られれば謝られるほど悲しいんだよ? 「ほ~んと、大丈夫だから!」 明るい声は、おもったらしいこの部屋の空気には思ったよりも不釣り合いだった。 「そっか…。」 「うん だから、じゃあね。」 まだ何か言いたげな高嶺悟だったけど、これ以上 嫌な自分はいやだから。 高嶺悟にも、気づいて欲しくないから。