ケンジは自室にこもると、再びノートを開いた。


ページをめくるたび、ケンジの心は大きく動かされた。



その中には、ケンジに関係のありそうなことは、全て書いてあった。


それは日々、お店の手伝いに明け暮れる裕美にとって、唯一の楽しみであったのかもしれない。



そう思うと、ケンジの心は締め付けられた。



読み進めるうちに、いくつか分かったことがあった。


裕美は、家計を助けるために、昨年の十二月からデパートの食料品売場でも働いていたということ。


奈央たちからよく励まされていたということ。


そして亡くなる直前まで自分のことを大好きでいてくれたということ。



そんな裕美の心を知りながら、昨日、自分に対して笑顔で接してくれた親友たちは、内心どう思っていたのであろう。


一人で頑張る裕美を置いて、東京へと行ってしまった自分に対してどんな思いを抱いていたのであろう。



ケンジは、羞恥心に胸もだえた。