しかしそのトラックの運転手は、そんな無残な姿の裕美を置き去りにして、そのまま走り去った。


その後、警察の懸命の捜索の結果、翌日高速道路のパーキングエリアで、運転手はトラックの運転席の中で寝ていたところを逮捕された。


そのあまりの無責任さに、そんな人間のために裕美がその生涯を終えざるを得なかったことに、言葉に出来ない口惜しさを覚えた。



やがて、ケンジたちと同じ年のころの男のアルバイト店員が、生ビール五杯を片手に持ってやってきた。


五人は、それぞれにその生ビールを一杯ずつ持って、小さく乾杯をした。



しかし再び、五人は黙ってしまった。


それに相反するかのように、周りの席で盛り上がる会社員たちの笑い声や話し声が店内に響き、それがより一層五人の心を重くする。



その雰囲気に耐えかねたかのように、ケンジは席を立った。


正直この苦しい空気から、いち早く抜け出したかった。



四人の友人は、ケンジが帰ろうとするのを、強く引きとめた。


しかし、ケンジはあくまでも席を辞する姿勢を崩さなかった。



ケンジは小さく四人に謝ると、酔いが回って盛り上がる客で溢れる居酒屋を出た。




外はもうすっかり暗くなっていた。