五人は裕美の葬儀の帰りに、近くの大衆居酒屋に入った。

普通の会社が終る午後五時を回ったばかりということもあり、店内は会社員たちで賑わいはじめていた。


沈んだ表情の五人は、若い女性店員に一番奥の座敷を案内されると、壁側に男三人、通路側に女二人の席順で座った。


四人が席に着いたのを確認すると、壁側の中心に座った土門が、礼服の上着を脱ぎながら、生ビールを五杯注文する。

通路に立った女性店員が、そのオーダーを聞きながら明るく返事をして注文を確認すると、黒いボールペンを動かして伝票に記入し、いそいそと厨房に戻っていった。


座敷の一番左隅の席に座るケンジの、正面の棚に置かれたテレビでは、今日あったニュースが流れている。

それを見て、今日から夏の甲子園大会が始まったことに、そのとき初めてケンジは気がついた。