「俺、数日後はもう東京だ。」


「そう…。」


裕美はそう言って口ごもると、苦しそうに目を伏せた。



そんな裕美にケンジが何かを言おうとした時、裕美が顔を上げた。


「坂の下まで歩こっか。」


「ああ。」


機先を制されて、ケンジはそうとだけ答えた。



二人が歩く桜並木から、春の日差しがこぼれる。


その眩しさにケンジは手をかざした。