「大好きだからこそ、ケンジくんには幸せになってほしいの。大学に行くという夢に向かって、一生懸命勉強しているケンジくんを見ていてそう、思ったの。」


裕美はそう言うと、まぶしそうに目を細めた。



「私は大丈夫よ。この大好きだった夜景と同じく、ケンジくんのことは忘れない。高校生活の大切な宝物として、大事に胸にしまっておくから。」


そう言うと、裕美は大きく息を吸ってケンジの方を見た。





「だから、私とお別れしてください。」




裕美は紅潮した頬に、無理に笑顔を作ってそう言った。




「でも裕美はどうなんだ。俺と別れて幸せなのか。それでいいのか。」


「うん。」




そのきっぱりとした裕美の返答に、ケンジは再び言葉を失った。




「私はケンジくんが夢を実現できるなら、それで幸せなの。」


そう言うと、裕美は身動きできないでいるケンジのそばに歩み寄った。



そして、その頬に軽くキスをすると、ケンジのそばを離れた。




「ケンジくん。私、三年間本当に幸せでした。」




裕美は穏やかな顔でそう言った。