やがて裕美はケンジの肩を両手で優しく押すと、その体を離した。


「だから、ケンジくんと一緒には東京には行けないの。」

そう言う裕美の両目から大粒の涙が溢れ、その頬を伝い、形の良いあごを離れて冷たく凍った地面へと落ちていった。


その頬と鼻は、始まりの公園と同じく赤く染まっていた。


「ごめんなさい。ケンジくん。」

涙を拭いながら何度もそう言う裕美の言葉は、静寂にかき消されていくのではないかというほど小さく、そしてか細かった。