まだ11月だというのに、凍てつくような寒さであった。


ケンジは両手に息を吐きかけると、学生服の襟を引っぱり顔をうずめた。


やはりいない。


無理もない、約束の時間は、とうにすぎている。

ケンジは必死に、彼女の姿を探した。


しかし、やはりいない。


ケンジは小さく肩をおとす。

そして大きなため息をつくと、チラリと自転車の方を見た。

諦めかけたその時。


「ケンジくん。」


ケンジの体は、一瞬固まった。


しかしすぐに我に帰ると、慌てて後ろを振り向いた。


そこには、ベージュのダッフルコートを着た小柄な少女が、ニコニコしながら立っていたんだ。



そう。

彼女は、いつも笑顔だった。