空からは、ひとつ、またひとつと、雪の結晶が音もなく、そしてゆっくりと落ちてきた。



「もう冬だね。」

今年はじめての雪に、ケンジはそう言った。


そういえば、二人の始まりも、こんな季節だった。


雪はみるみる激しくなり、二人の頭を、白く染め始める。



やがて坂の中腹までくると、突然裕美の足が止まった。


「ケンジくん。あのね、」

「ん?」

ケンジはそう言うと、裕美の前髪に積もった雪を優しく払った。