東京行きの飛行機の搭乗手続きを知らせるアナウンスが、空港内に響き渡った。


すると、大型テレビの前に並ぶ待合用のベンチに大勢座っていた搭乗客たちが、一斉に立ち上がった。



帰省してきたときにはいていたジーンズに、白いTシャツといった格好のケンジも、ゆっくりと椅子から腰を上げると、人でごった返す搭乗口へと急いだ。


ケンジは手荷物検査口へ続く通路の前につくと、小さなスポーツバッグを左手に持ちながら、ポケットから航空券を取り出した。



しかし、搭乗のゲートの番号を確認してから顔を上げると、ケンジの足は止まった。



「お、お前ら…。」


そこには、仲間たちが立っていた。



「一人で帰るなんて、水臭いじゃないか。」


土門の声に、ケンジは尋ねた。



「何で…。今日、帰ることは言ってなかったはずだぞ。」


「お前の母さんに聞いたんだよ。」


尾上はそう言うと、しょうがないなあ、と両手を広げて苦笑した。