それを見て、ケンジは安心した。



一生懸命、その人生のともし火を燃やし続けた、裕美。


君の最期の笑顔を一生忘れない。


君という大好だった少女がいたということを一生忘れない。





君への大好きな思いを、一生忘れない。





ケンジは、夜空を見上げた。




裕美は、一人ぼっちではない。


その悲しい道程には、優しいふたつの思いがよりそってくれている。




そして思いの宿った優しい二条の光が、裕美の体が放つ光と完全に一体になると、その合わさった三つの光は、美しくそして力強い輝きを放ち始めた。


信仰心など全くないケンジではあったが、その光景がこの上もなく神聖なものに感じられた。


そして、その短い人生の最期に、生きた証を残すかのように光を放つ裕美の姿を、その目に焼き付け続けようと思い、瞬きをすることすらためらった。



しかしその光は、無常にも遥か手の届かないところまで舞い上がっていた。


そして、必死で見詰め続けるケンジの前で、やがてその光はほんの一筋の光になり、天に吸い込まれるように消えていった。




全てが消え去った坂道には、再び静寂が広がった。





ケンジは、そこに一人取り残され、立ち尽くしていた。


しかしその思いは、過ぎ去った過去には向けられてはいなかった。





そう、自分は、裕美の分まで生きねばならない。




前を向いて、まっすぐに生きねばならない。




それが彼女が存在していたという、確かな証だから。