「そろそろお昼だね。」


「ああ、そうだな。」


デパートの雑貨屋の入口で裕美に声をかけられると、ケンジはそう言って腕時計を見た。



針は午後0時30分を指している。


今日が終わるまで、後半日だ。



「何を食べたい?」


「ケンジくんの財布にも限界があるでしょ?」


裕美の問いかけに、ケンジは思わず言葉に詰まった。



実際、財布の中にはあと数千円しか残っていなかった。



「いいよ。お弁当を買って、外で食べようよ。」


「外でって…どこで?」


ケンジはそう尋ねた。



「学校で。」


そう言うと裕美は、戸惑うケンジの右腕を取って駆け出した。





これが裕美の味わう、最後の夏の日であった。