仲間たちを乗せた車が見えなくなると、ケンジは左に立つ裕美の顔を見た。



「さて、どこに行こうか。」


こみ上げる悲しさに耐えながら、ケンジはそう裕美に尋ねた。



「私、カラオケに行ってみたいの。」


裕美の願いは、ささやかなものであった。



ケンジの胸は詰まった。



誰もが気軽に行くカラオケですら、今まで裕美は行ったことがなかったのだ。


その事実が、裕美の卒業後の生活を象徴していた。



ケンジは、今にも吹き出しそうになる涙を必死でこらえた。



そしてうん、と気を入れると、裕美の右手を取ってカラオケショップへと向かった。



カウンターで受付をすると、二人は係員に個室に通された。