日が昇ると、土門は五人を車に乗せた。


運転しながら、土門はちらりとバックミラーを見た。

そこには、ケンジの横で、幸せそうに笑う裕美の姿があった。


こんなに元気なのに、本当に今日、天へ召されてしまうだろうか。

土門の中に何度も沸き起こるその疑問は、そのたびに思い出す残酷な現実によって打ち消される。


土門は溢れ出そうな涙を、必死でこらえた。



泣いてはならない。

たとえ自分だけでも。


笑顔で裕美を送り出したい。

裕美にとって最期になるこの時間を、体一杯で感じていたい。

そう思うと、土門のハンドルをにぎる両腕に力がこもった。


そんな土門が運転する車は、駅へと着いた。


この時、裕美とケンジ以外の、四人の気持ちは決まっていた。


「次はどこに行こうか。」

車が停車するのを確認すると、ケンジはそう言いながら後部座席の扉を開けて地上に足をついた。

それに続くように、隣に座っていた裕美が車から降りた。



しかしその後には、誰も続かなかった。