裕美がいったい何をしたいのか、理解できないまま呆然としているケンジの背中を、土門の大きな手のひらが叩いた。


ケンジはその衝撃に、思わず土門のほうを見る。



「分からない奴だな。裕美はお前と二人きりになりたいんだよ。」


「相変わらず、女心が分からないんだよねえ。」


土門とは反対隣で香澄がそう言った。



「早く行ってやれよ、ほら!」


尾上はそう言ってケンジの後ろに立つと、その背中を蹴飛ばした。



ケンジはその反動で、数歩よろよろと歩いて止まった。



その左手を裕美は右手で握ると、土門たちの方をちらりと見た。



「裕美!その鈍感野郎を早く連れて行け!」


土門の声に、裕美の顔は緩んだ。



そんな表情を横目で見て、ケンジもつかの間の幸せを感じた。


いつもぐずぐずしている自分の背中を押してくれる。





全く、しょうもないほど最高の仲間たちだ。