やがて、あたりに夜の帳が徐々に落ち始めると、ケンジの隣に座る裕美がその頬をほころばせた。



「もうすぐだね。」


そううれしそうに言う裕美の顔を見て、ケンジは大きく頷いた。



その心中を思いやると、あまりにも心が痛い。



芝生に並んで腰を下ろす六人は、まもなく始まらんとしている火の祭典が始まるのを、ひたすらに待ち続けていた。


ほかのバンガローに泊まっていた家族連れも、表に出てきて花火があがるのを待っている。



その時、町中いたるところに設置されたスピーカーから、マイク放送が流れた。


「まもなく本年度の花火大会を開催いたします。」


その声に、あたりは期待をこめてざわめいた。



「まもなくだぞ。」


土門が言った。



五人の顔にも、期待感が浮かぶ。



その時裕美が、突然立ち上がった。


そして数メートル丘を下ると、立ち止まってケンジたちの方を振り返った。