「裕美、久しぶり。」


駆け寄ってきた自分に向かって、助手席の窓から笑顔でそう言う尾上に、裕美は力いっぱい頷いた。



尾上はその笑顔に微笑みながら頷き返すと、その後ろにいるケンジのほうを見てもう一度頷いた。


それを見てケンジも、口を真一文字に引き結んで頷いた。



「まあ、話は後だ。早く乗りな。」


ケンジは尾上に促されると、後部座席の扉を開けた。



三列シートの一番後ろに奈央と香澄、二列目にケンジと裕美が座る。


四人が全員乗り込み、シートベルトをするのを確認すると、運転席の土門が言った。



「よし、じゃあ行くぞ。」


「行くって、どこにだよ。花火大会は明日の夜だぞ。」


ケンジの質問に、土門はただにやりと笑うと、ゆっくりとアクセルを踏んだ。



「まあいいって。心配するな。」


そう言って、土門が助手席の尾上のほうを見ると、尾上も土門のほうを見た。



そして、二人は顔を見合わせていたずらっぽく笑った。