裕美の母はテーブルの上に突っ伏したまま、静かに眠っていた。


憔悴しきった顔にかかるその白髪交じりの髪は、部屋の窓の隙間から吹き付けてくる風にかすかに揺れている。 



月明かりにうっすらと照らされた、安らかなその母の寝顔の横には、一通の手紙が置かれていた。




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あなた、ごめんなさい。


私はあの子を幸せにすることが出来ませんでした。


いろんな悲しい思いや辛い思いをさせたというのに、いろんなことを我慢させてきたのに、何の幸せも掴むことなくあの子は逝ってしまいました。


あの子を守ることが出来なかった私は、本当に親として失格ですね。



でも、これだけは言えます。


あの子はその短い生涯を、立派に生きたということを。


そんな子に育てることができたことが、私の唯一の誇りです。



一昨日、あの子の部屋の中で見つけた日記を、ケンジさんの家に届けに行ってきました。


きっと、ケンジさんなら、あの子の想いを受け止めてくれると思います。



あなた、それでよかったんですよね。