ケンジは苦しそうに頭を両手で抱えた。


こんなに苦しいのなら、好きにならなければよかった…、ケンジの頭には再びそんな思いがよぎり、慌てて頭を大きく振った。



それは本心ではない。



自分でもそう分かっていながら、幼稚な自分は苦しみに耐えかねて、そんなくだらない後悔をしようとする。



相変わらず自分は弱い人間だ、ケンジはそう思い顔をゆがめた。


ケンジは大きく息を吐くと、真夏の澄み切った空に浮かぶ無数の星々を見上げた。



辺りを静寂が支配している。


きれいに輝く街の明かりも、ぼんやりと照らす街灯も、優しく照らす星の光も、全てがあまりにも静かで、さらにケンジは果てしない孤独の渦に飲まれていく。



その時、ケンジの耳に何かの物音が聞こえた。


ケンジはその物音のする、坂の下の方を見た。



しかし、そこには何も見えなかった。


ケンジは、無言のまま星空に視線を戻した。



しかし、再び何かの音がした。


そして、今度のその物音は鳴り止むことなく、着実に近づいてくる。




ケンジは再び視線を動かすと、目を凝らしそして耳を澄ました。