温かい記憶。



大学生のケンジにとって、まだ近いはずの記憶が遠い昔のことのように感じられる。



堤防に並んだ五人は、何も言わず、ただ夏の輝く海を見つめていた。


「まさか裕美が・・・。」
奈央がそうぽつりと言うと、その両目からは、大粒の涙がこぼれおちた。




彼女は僕らの蒼い記憶のカバンに、たくさんの温かいかけらを残したまま行ってしまったんだ。