「私は、ケンジくんがずっとここにいると思ってたし、私も永遠にその姿をここで見ていられるものだと、そんな錯覚をしていたの。」


「これからだって、いつだって見ていられるだろ。」


土門の何気ない返答に、裕美はうっすらと笑みを浮かべて頷いた。



そして、雪が降りしきる灰色の空を見上げながら、ぽつりと言った。


「高校生活って本当に楽しかった。」


「そうだな。」


「それも、もうすぐ終わってしまうんだよね。」


「…。」


土門は言葉に出来ない違和感を感じ、何かを言いかけてやめた。



「ケンジくん、今日の入学試験、頑張ってるかな。」


「そうだな。あいつ、勉強はあまり出来るほうではないからな。」


土門の皮肉交じりの言葉に、裕美はくすりと笑った。



そして、まぶしそうに暗い灰色の空を見上げると、ポケットから両手を出して、その右手のひらを広げて空へ向けた。



「また、雪が降ってきたね。」


裕美は、手のひらに落ちた結晶を見ながら、そう言った。





その雪の小さな雪の粒は、裕美の手のひらの上であっという間に溶けて消えていった。