やがて、夏の一時的な天気雨は降り止み、再び太陽が顔を出し始めた。


ケンジは土門から借りた真っ赤なジャージを着ると、室内練習場の扉を開け外に出た。



あたりには夏の雨が降った後の、独特なにおいが漂っていた。


照りつける太陽の下、乾いて固まったグランドには、ちょうどよい雨だったのかもしれない。


踏みしめるケンジのスニーカーに、やわらかい土の感触が伝わってくる。



ケンジは大きく息を吸うと、ゆっくりと走り始めた。


そして、その歩調を徐々に早めていく。



久しぶりにグランドを走るケンジに、容赦ない真夏の日光が照りつける。


その額には、見る見る玉の汗が浮かび、そして顎を伝い、地面に滴を落とし始めた。



やがてケンジは息が切れ、その気管支が熱く痛み、そして激しく咳き込み始めた。


しかしケンジは、その足を一向に緩めはしなかった。



ただただ、黙々と自分を責めるかのようにグランドを走り始めた。