ケンジは、高校時代と同じように自転車をこいだ。



しかし想像以上に息が乱れるのが早い。


完全な運動不足を自覚して、ケンジは小さく溜息をついた。



グランドに着くと、綿の短パンに真っ赤なTシャツを着た土門が、車をグランドに横付けにして、運転席から降りるところであった。



「よう、ケンジ。遅かったじゃないか。」


「何言ってやがる。お前が早すぎんだよ。」


ケンジがそう言って抗議するのを、土門は笑って聞き流しながら、グランドへ歩き始めた。


そのあとを追うように、ケンジもグランドへと向かう。



二人は練習場の一塁側内野フェンスのすぐ外側の芝生に腰を下ろすと、まだ朝の十時だというのにすでに練習を始めている後輩たちを眺めた。


空には真夏の太陽が輝いている。



「なあケンジ。」


「ん?」


「お盆休みだっていうのに、あいつらご苦労なこったな。」


「俺たちもな。」


そう言うと、互いに力ない微笑を浮かべた。




しかし、その表情はすぐに暗く重く沈んだ。