ケンジはその日の朝、裕美の痛いまでに苦しむ日記を読み終わると、いつものように白いTシャツとジーンズに身を包んだ。


そして、使い慣れたリュックサックに日記を突っ込み家を出ると、自転車にまたがりペダルをこぎ始めた。



数回ペダルを踏むと、すぐにケンジのまぶたは熱くなってきた。


胸の苦しみに息が詰まりそうになる。



しかし、ケンジは口をきっと引き結んで、今にもこぼれそうな涙をこらえた。




今、ケンジが泣くわけにはいかない。


裕美は自分の比ではない恐怖と戦っているのだ。



今、自分が涙を流すわけにはいかない。


これ以上、裕美に悲しい思いをさせてはいけない。






笑わなきゃ。