翌朝十時、ケンジと奈央は、町のターミナル駅前で待ち合わせた。


帰省するときにはいてきたジーンズに、水色のTシャツを着たケンジが駅が着いた時、まだそこには奈央の姿はなかった。



ケンジは黒いリュックサックを肩からはずして横におくと、駅前にある木のベンチに腰をかけた。


その時新幹線の小さな旅を終えてきたのであろう、ぼんやりと座るケンジの目の前をホームから出てきた若い家族連れが何組も歩いて行った。



ケンジは、腕を頭の後ろで組んで、空を見上げた。


頭上では、夏の澄み切った青空が広がっていた。



「ごめん、待った…?」


ケンジが、背後から声をかけられて振り返ると、そこには奈央が立っていた。


赤いミニスカートに白いシャツを着たその小柄な姿は、高校生と言われても信じてしまうかもしれない。



「いや、さっき来たところだよ。」


ケンジは、奈央に気がつかれないように両目をぬぐうと、ゆっくりと立ち上がった。



「ここじゃ何だから、店に入ろうか。」


「うん。」


奈央は先に歩き始めたケンジの左後ろに続いた。




そんな二人の姿は、はたから見ると恋人同士に見えたかもしれない。