「え…。できるの…。」


「ああ。裕美の想いは、必ず届く。」


力強くそういう父の言葉を聞く裕美の視界の隅に、かすかな光が入った。



その光は、ケンジの枕元から発せられていた。



裕美は恐る恐る近づいて身をかがめると、それを見つめた。


裕美は、不安そうに後ろを振り返った。


父親はそんな裕美に向かって小さく頷く。



それを見ると、裕美は再びケンジに向き直り、ゆっくりと手を伸ばした。


裕美の小さな手には、あの日記帳の感触が感じ取れた。


その側においてあるシャープペンシルも掴むことが出来た。



裕美はそっとその日記とシャープペンシルを抱きしめた。



「ねえ、お父さん。」


裕美は宝物を胸に抱くように日記を抱えながら、振り向きもせず父に問いかけた。



「私は、いつまでこの世にいられるの。」


裕美は、ぽつりとそう言った。



「8月15日…、お盆の日までだ。それが、お父さんにしてあげられる精一杯だ。」


父は静かに言った。




裕美は小さく頷いた。