幼かったあの頃の俺は、それが何であるかすら知らないでいた。

 雫へ対する、この衝動は日に日に増して行った。
 いつか彼女は、俺の前からいなくなってしまう。
 そう思うと、自然と涙が頬を伝った。
 ポロポロと涙を零す俺を見て、雫は優しく問い掛ける。
「お兄ちゃんは、私の事が好き?」
「……当たり前だろ」
「じゃあ……」
 雫は俺の手を取った。
 彼女の冷たくて細い指が、汗の滲む俺の手に絡む。
「来て……お兄ちゃん……」
 その声と共に、俺は人形の様に小さな雫の体を強く抱いた。
 彼女の唇に自身の唇を重ね、ゆっくりと目を瞑り、そのままベットに倒れた。
 細くて小さな彼女の腕、胸、足。
 それらが俺の体と絡み、今までになかった様な感情が溢れ出て来る。
 ずっと一緒にいたい。
 もっと触れていたい。
 俺は彼女のパジャマの一番下のボタンを外し、そこに手を入れた。
 その行為に答える様に、可愛らしい声が聞こえて来る。
 更に再び彼女の唇に、自分の唇を重ねてみた。
 先程とは違い、今度は舌が絡んで来る。
 互いの唾液が交わり乱れる音が、室内に響く。
 今がずっと続けば良いのに。
 いつか訪れるであろう雫との別れに目を背け、俺はこれでもかという位に彼女と乱れた。


 暫くして、珍しく両親が家に帰って来た。
 雫に関しての大事な相談があるのだそうだ。
「綾人は部屋にいなさい」
 父にそう言われ、俺は自室に入れられた。
 どことなく違和感のある、両親の行動に違和感を感じた俺は、こっそり部屋を抜け出して両親の話を盗み聞きした。
 父は沈んだ声で話を切り出す。
「この前の検査で……雫の子宮に異常があったらしいんだ」
「どういう事?」
「赤ちゃんが……いたらしい」
 母はテーブルを強く叩く。
「赤ちゃん!? どうして、あの子に赤ちゃんが出来るの!? あの子は、ずっと病院にいたのよ! 父親は誰なの!?」