「どうして俺なんだ?」
「だって、宮久保さんと一番仲良いのは烏丸君じゃん」
 そんな理由で、宮久保の分の給食が乗ったトレイを笑顔で押し付けられた。
 まったく、本当に良い迷惑だ。
 保健室のドアを軽くノックして、中に入る。
 先生はいない様だ。
 ベットのカーテンが閉まっている事を察するに、宮久保が寝ているのだろう。
 とりあえず、近場の机にトレイを置いた。
 さて、やる事はやった。
 教室へ戻ろう。
 そう思った時だ。
 カーテンが開き、中から宮久保が出て来た。
 驚いた様な表情を浮かべ、俺を見るなり彼女は目を反らす。
 どうにも話しづらいな。
「もう大丈夫なのか?」
「……大丈夫」
「そうか。お前の分の給食を持って来たんだけど、食えるか?」
「……少しだけなら」
 宮久保は椅子に座り、箸に少量のご飯を摘まみ、ゆっくりと食べ始める。
 給食は届けたし、もう教室に戻っても大丈夫だろう。
「じゃあ、俺は教室に戻るよ」
 そう言い掛けた時、彼女の箸は止まっていた。
 見ると、宮久保は俯き涙を浮かべている。
 何か泣かせる様な事をしただろうか。
 そんな覚えはない。
「ちょっ……どうした? 大丈夫か?」
「……ごめんなさい」
 震えるか細い声で彼女は、そう連呼し続けた。

 保健室にあったティッシュで涙を拭かせ、宮久保を落ち着かせた。
「何か……嫌な事でもあったのか? 悩みがあるんなら、言ってみろよ」
「でも……」
 本当に鈍臭い奴だ。
 しかし、ここで怒鳴ったりしたら、もう顔も遭わせられそうにない。
 俺は不器用にも笑って見せた。
「話して、楽になる事もあるんだからさ」
「これから、この学校にいられる自信がなくて……」
「どうして?」