俺の口調はかなり慌てていた。
「じゃあ、宮久保を保健室に」
「あ、はい! 連れて行きます!」
 彼女の体を持ち上げ、肩に抱える。
 態勢を安定させ、俺は保健室まで走って行った。


 保健室の先生は、宮久保をベットの上に寝かせた。
「ただの熱中症ね」
「そうですか。……良かった」
 保健室は空調が完備されていて、教室とは違いとても涼しい。
 ここにいれば、彼女も大丈夫だろう。
「それにしても、ビックリしたわよ」
「何がですか?」
「だって、彼女を自分の肩に担いでるんですもの」
 いったい周りからは、どんな風に見えていたのだろう。
 そう思うと、教室へ帰るのが億劫になってきた。
「すみません。さっきは、無我夢中で……」
「まあ、いいわ。授業も終わる時間だし、そろそろ教室へ戻りなさい。彼女の事は私に任せて」
「はい、お願いします」
 保健室から出ると、夏場の熱気が一気に俺の体を包んだ。


「なあ、あの子と何かあったんだろ?」
 教室に帰って来て、それと同じ質問をされたのは、これで何度目だろう。
 他の連中も先程の事が気になっているらしく、さっきから同じ事の質問責めだ。
「さっきから他の奴にも言ってるけど、何もないからな」
 蓮は不敵に笑う。
「おいおい、隠すなよ。ていうか、女の子を肩に担ぐのって男として邪道じゃね? 宮久保のパンツ見えそうになってたぞ。そんでもって、宮久保を担ぐお前を見て、皆が顔真っ赤にしてやんの」
「それは、拙かったかもな……」
 実際にスカートの中が見えていたのかは、知らないが……。
 根も葉もない噂を発てられて、肩身の狭い思いだけはしたくはない。
「妙な噂だけは発てるなよ」
 蓮はニカニカと笑う。
 本当に分かっているのだろうか。


昼休みになると、俺は流されるがままに、宮久保の分の給食を運ぶ事になった。